作品紹介「海底文鉢」(続き)

この「海底文鉢」は幾重にも重ねた透明、薄い青、薄い緑のガラス層は奥行きをもって澱んだ深海を表し、横方向に向かって施されたグラビュールが繊細に色調の変化を生み、潮の流れを表現します

側面には意図的に大小多くの気泡を練り込み、そのうち2つはカボッションで真珠が表現されています

美しい海底の風景を写しながら、実のところ植物学、化学、科学、文学などあらゆる分野に精通した科学者としてのガレの観察眼が、海面を通して差し込む光など、単に美しいだけではない写実的な表現を可能にしたのです

ガレは深海をテーマにした作品を多く制作しており<展示室・冬>の「海馬ータツノオトシゴ文花瓶」もその1つです

新たなテーマへの模索は新たな研究へと繋がりたい、文学や芸術に限らず、科学的なガレの眼差しこそがガレのガラス作品を芸術の領域へと押し上げたのです

 

<技法>グラビュール(手彫り)

グラビュール

研磨剤をつけた銅製のグラインダーでガラスを削り文様や文字を彫り込む装飾的な技法

非常に細やかな描写が可能

職人による高度な技法はまさに芸術であり、ガレが指示する植物の繊細なタッチに、工房の専門職人が応えていた

(写真:エミール・ガレ「大麦とねずみ文花瓶」)

 

<技法>カボッション

フランスのバラ香水瓶 しずくアップ

宝石のカボション・カットのようにガラスが半球体に膨らんだ状態でアプリカシオンされたものを特に「カボッション」と呼ぶ

(写真:エミール・ガレ「フランスのバラ香水瓶」)

 

<技法>アプリカシオン(アップリケ)

アップリケ

がらすを熱上げして表面を軟化させ、そこに別に制作しておいたガラスの塊を貼り付ける加工法

浮き彫りのように高さを出すことができる

ガラスが常温に冷めてから、手彫りで細部を表現することもできるが、晩年のガレはガラスの流動的な表現を好み、細かく手を加えるよりガラスそのものの質感や躍動感を重要視した

(写真:エミール・ガレ「大麦とねずみ文花瓶」)