美術館ご挨拶の続き

生まれ故郷への愛情と、自然への崇敬、探究者としての挑戦はガレという人物を形作る軸でした。

ガレが故郷を、家族を思う強い意志の根底にはいつも、幼い日々を過ごした故郷の森の自然への愛情と崇敬、そして小さな生命への温かなまなざしがあふれていました。

私はそこに共感し、ガレという人物のまなざしを通して、改めて自然界の秩序や美しさに、驚きをもって感謝することができるような気が致します。

年代順の展示を排し、細かな技法の説明はガイドブックでご覧いただけるようになっています。

また2006年の全館リニューアル時にバリアフリー対応を目指しました。美術館内はガラスケースに高低差があります。

これは丈夫な方の目線で統一するのではなく、車いすの目線でも鑑賞できるよう設計したためです。そのため、一部(秋の部屋)では車いすにお座りの方の目線に合わせ、展示ケースがかなり低い位置に置かれています。丈夫な方はしゃがみこんで作品をご覧いただく必要があります。また、少し高い位置に置かれ、仰ぎ見るようなガラスケースもあります。森の中で木々を仰ぎみるように、また、可憐な花を見つけた時に思わずしゃがみこむようなお気持ちで、作品をご鑑賞いただければと願っております。

ここは、ガレの作品が「息をし」、生き続ける場所です。空間と、安曇野の四季を感じていただくための美術館です。

作品は掌(たなごころ)感を大切にし、写し取られた植物や虫たちのひそやかな息が聞こえてくるような、愛らしいものを集めています。

本当に小さな小さな美術館ですが、森を散策するように、静かな時間を楽しみにいらして下さい。

美術館入り口に掲げた文字は、“Ma Racine est au Fond des Bois.” (我が根源は森の奥にあり)

ガレが自身の工房の扉に刻んだ言葉です。

研究者として、オーガナイザーとして、経営者として、祖国を、家族を愛する一人の人間としての、生きていく覚悟をも感じさせる深い言葉だと思います。

ガレのこの言葉の意味の一端を、ここで感じていただければ幸いです。