華々しい活躍と、その才能の円熟期にあった一方で、ガレの肉体は病魔に蝕まれ、精神分裂症の症状を呈していました。パトロンの死や、愛する父親の死がこれに拍車を加え、ガレの心を表すように、その作品はグロテスクとも言える、苦しみに満ちたものへと変化します。

陰鬱な時代を経て、ガレの作品は再び落ち着きを取り戻しました。人生の儚さ、仏教的輪廻観、土へと帰る自然の摂理。ガレの思考は、彼自身が愛して止まない森の奥へとその着地点を見つけたのかもしれません。哲学的ともいえる色彩と、儚さのなかに垣間見られる強い意志と諦観こそがガレの作風の終着点でした。

1904年9月23日、自然を愛し、深い洞察力と柔らかな精神をもち、時代を席巻したアール・ヌーヴォーの寵児はその人生の幕を閉じました。ガレの死は、同時に一つの芸術様式の終焉も意味していたのです。彼の工房の扉刻まれていた言葉、「我が根源は、森の奥にあり」。

今日わたくしたちがガレの作品に感じ取るものは、ドラマティックな彼の人生と精神の変遷、そこはかとなく漂う人生の儚さ、そして、生を受けたものすべてが、いずれは土に帰っていくという無常の哲学なのです。